69th Graduation Ceremony Speech第69回卒業式 式辞

固く蕾を閉じ、暖冬とはいえ、冬の寒さに耐えてきた木々の芽が膨らみを増し、春の息吹が漂いはじめまさに百花がほころびようとするこの佳き日に、学校法人山村学園 理事長 岡實様、同じく法人本部長 山村正己様のご臨席の下、 令和元年度 学校法人山村学園 山村国際高等学校第69回卒業式が厳粛に挙行できますことには教職員一同この上ない喜びであります。

ただ今、卒業生301名の皆さんに卒業証書を授与いたしました。 そのときの卒業生の目の輝きを見たとき、山村国際高等学校3年間の課程を修了した満足感と達成感を感じました。

卒業生の皆さんは、3年前、自らの夢と大きな希望を胸に抱き、本校での生活をスタートさせました。 以来、照りつける夏の太陽の下で、天高く空澄み渡る秋に、冷たい木枯らしが吹き荒ぶ冬のそれぞれの季節の中で、知識と心と体を育んできました。

校訓である「質実」「英知」「愛敬」のもと、素直な気持ちで高い知性と優れた想像力を発揮し、他者に対する尊敬の心を備えた社会に貢献できる人材として、さらに、礼節と品格を備えた山村国際生として、一回りも二回りも大きく成長し、明日からはそれぞれの道へと旅立ちます。

私は、今年度本校に着任しました。 以来、授業・部活動・生徒会活動・学校行事などで最上級生として、それぞれの場面でリーダーシップを発揮する姿に感動を受けるとともに頼もしさを感じました。この意義深い門出に当たり、心から幸多かれと祈念いたします。

さて、21世紀も5分の1世紀が過ぎました。その間国内外に多くの厳しい問題を抱え、難しい選択に迫られています。 近年の気候の変動は、環境破壊や資源エネルギーの浪費による「地球温暖化」がもたらす異常気象として、私たちに警鐘をならしているのかも知れません。 さらに、未だに爪痕深い東日本大震災からの復興原油価格の高騰、株価下落などの経済状況、少子高齢化による労働人口の減少・働き方改革そして、本日の卒業式にまでも影響を及ぼした新型コロナウイルスによる健康被害など新たな課題とともに、日本の社会や経済の成長・発展を損なう状況は解決されていません。

また、厳しい国際情勢に目を向けると国家間の利害対立が解消されないままの状況にあります。 パワーバランスの急激な変化、テロやサイバー攻撃など新しい脅威の出現によりこれまで、安心・安全・不変と思われていたことが次々と崩れ、世界は変化の激しい不透明な時代が続くことが予想されます。

皆さんは、これらの課題解決に向け、社会の中心となって果たすべき使命を託されています。 こうした大きな期待を担って、巣立っていく皆さんへ一言餞の言葉を添えたいと思います。 これから生きていく中で大切なことは、「社会への還元と感謝の心」を持つことです。

私たちは多くの人に支えられ生きています。 他人との関わりの中で生活している限り周囲の人々の世話や助けを受けています。 持ちつ、持たれつ、助け、助けられて社会生活を営んでいます。まさに、象形文字の「人」が示すとおり、「人」はお互に支えあってこそ生きていけるのです。 このことを、今日の自分に置き換えてみてください。 皆さんが、今日という日を迎えられたのも親・兄弟・部活動の仲間・クラスの友人そして先生方など、多くの人の支えがあったからです。

43歳の若さで第35代アメリカ合衆国の大統領に就任したジョン・F・ケネディーは、就任演説の中で 「あなた方は合衆国に何をしてもらえるのかを問うのではなく、合衆国に対して何ができるかを問うべきである」と言っています。 この有名な一節は、主体性の欠如が懸念されている現在の日本への警告のようにも受け取れます。

これからは、皆さんが親や社会に対してどうしたら役に立てるかを考え実行する時が来たのです。 こうした人との関わりを自覚したとき、多くの人からの恩恵に対する感謝の心とともに周囲の人々や社会に貢献したいという気持ちが生まれてくるのではないでしょうか。 一人一人のそのような気持ちや働きかけが明るく温かい思いやりのある社会をつくる原動力になり、自分の幸せにも繋がってくるのです。 人からの恩を忘れることなく、周囲への感謝の心を常に持ち続けることのできる人間になって欲しいものです。

そして、卒業生の皆さんが残してくれた数々の功績や素晴らしい伝統と校風を後世に伝え、日々の学校生活を充実したものにしていく中で、高い知性と強靱な心身、豊かな心を培い、大きく飛躍する山村国際高等学校を築いて参ります。 結びに、卒業生の皆さんにお願いを申し上げます。

 

まずは、入学以来、この3年間、ときには厳しく、ときには温かく、そして、優しく皆さんを励まし支えていただいたお父さん・お母さんをはじめ家族の方への感謝の気持ちを、また、保護者の皆様から賜りました本校の様々な教育活動に対するご理解・ご協力に全教職員から感謝を申し上げさせていただきますこと。 この2点につきまして、保護者の方に必ずお伝えください。 よろしくお願い申し上げます。

それでは、卒業生の今後のますますのご活躍・ご発展をご祈念申し上げ、式辞といたします。

令和2年3月3日
学校法人山村学園 山村国際高等学校
校長 中山 達朗